ROYAL LOCHNAGAR
 

遠くに暮らす友のことを
想いながらグラスを傾ける
若い頃に
ともに過ごした時が
ゆっくりと目の前に甦ってくる

彼の暮らす街は
少しだけ,北・・・
少しだけ,今はもう
風も冷たいに違いない


故郷を離れて,随分時が過ぎてしまった.
僕は,仕事を口実にして
暫く戻っていない.

ロッホナガーは
ゲール語で
「岩の露出した湖」という意味.
幾分,荒々しい名をもつのだが,
口にすると,穏やかで
ゆったりとした味わいに胸が救われる.

この店のバーテンダーが以前,
「あたたかみのあるモルト」と
評していたが,なるほど・・と思う.
ロイヤル・ロッホナガー・・・
友人と僕が共通して好んでいたモルトだ.

永劫回帰,彼も僕も違う空間で生きていても,
同じ故郷をもち,辿りつく処は,
きっと,同じ.
彼は今,
少しだけ早く季節の変わる街に暮らしている.
ひょっとすると,その街の何処かで,
ロイヤル・ロッホナガーを
飲んではいないだろうか・・・・

厳しい冬を前に
あたたかみのあるモルトで
胸の芯を
あたためてはいないだろうか・・・

岩の露出した湖の清水から
あたたかい味わいが生まれる.
一見,荒々しくとも,
それは,強く,そして深くあたたかい.