ROSEBANK
 

ここではない,何処かへ
行きたい
でも,それが何処なのかは,
自分でも,はっきりと言えない

この感覚は
昔,愛した人を
思い出す感覚と似ている


ローズバンクという
バーテンダーに注文する時,
少しだけ照れてしまう名のモルトがある.
やさしくて,
スマートで,
ここちよくあまい.

「このモルトも蒸留所が閉鎖されているんですよね」
バーテンダーは,幾分淋しそうにボトルを見ている.

確かに・・・僕もそう思う.

最近,周囲を見渡しては,
居心地が悪くて,どこか遠くへ行きたくなる.
誰とも折り合いが悪くて,
それでいて,
上手く自分の想いが伝えられなままで.

ローズバンクに少しだけ
気持ちを許しているのだろうか・・
独りでいても,誰かと話しているようだ.
昔、愛した人の横顔がなぜか
思い浮かぶ.

人はどうして,大切なことを
しっかりと留めることができないのだろうか・・・

それとも,
そんなことをいつまでも,考えているのは,
僕だけなのか.