PORT ELLEN
 

確かめたいことがある
本当のところ
君と僕は
繋がっているんだろうか

君とはいつもすぐにでも
会うことができて
あたりまえのように
優しくしてもらっているけれど

実はとても不安なんだ


あたりまえのことは
崩れてしまった時には
取り返しがつかないことが多い.
君にはいつも
とても優しくしてもらっているけれど.

君との待ち合わせはいつも,
僕が遅れるのが常だ.
そして,君が優しくしてくれることを
僕はいつも期待している.

君は,待ち合わせの時刻など
存在しなかったように,僕を待ってくれている.
この店のバーカウンターでも,
いつも君を待たせている僕は,
バーテンダーに,呆れられている.
「バーで彼女を
  こんなに長時間待たせるなんて」と.

バーテンダーが僕によく勧めるモルトは,
ポート・エレン.
港の名前でもあり,女性の名前でもある.

美しい響きの名のモルト.
色合いも甘く優しい.
けれども,キリリと極めてドライでスパイシー.
ひとくち口にすれば,
バーテンダーが,言わんとしていることがよく分かる.

でも,分かっているけれど,
なおらない.
僕は今夜も君を待たせている.

バーのドアを押すと・・・
でも,きっと今夜も
君は,甘く優しい笑顔で
僕に微笑んでくれるに違いない.