INVERLEVEN
 

好きな人のことを
目を綴じて思い浮かべる
彼女のこと
彼女の小さな仕草を
思い出して

目を綴じたままで
モルトをひと口


インヴァリーブンは
深い味わいで
目を綴じて,
ゆっくりと味わうのが相応しい.

独りで飲んでいるけれど,
僕が,誰を思い浮かべて
グラスを傾けているのかは,
このモルトを頼んだ時点で
バーテンダーにはお見通しのようだ.

スパイシーでリリカル
僕の芯のところを優しく見つめている
彼女のあたたかいまなざしを
思い出しながら.
君のさり気ない小さな小さな動きを
思い出しながら.

言葉を超えた愛情は,
この世の中に,
あまり見つけられないものだ.

廻り逢えたことだけで,
幸せなことなのだろう,きっと.
その存在が近くても遠くても.
彼女にいつも逢えなくても.

「三杯目はストレートで」
僕の声に,バーテンダーは
ゆっくりと頷いた・・・