AUCHENTOSHAN
 
子どもの頃は
夢と自分の未来とを重ねていた

信じること、すべてが好きで
愛していた

大人の僕は
ウィスキーを飲む時間が
今の願いのすべてを
いとおしむ一時である


僕は、子どもの頃から、人の言う事を素直に聞かなかった。
反発してつい、反対のことを言ってしまう。
人と同じことをしなければならないなんて、
考えられない、学校も嫌いだった。
なにかつまらないことがあると、
ひとりで野原、森の中で遊んだ。
大切にしていた場所は、野原を越えた丘。
登りきり、空を仰いだ。
風が強くて、心地よかった。

子どもの頃から夢は大きかった。
例えば、空を飛んでいるような感覚で、ものを考えていた。
パイロットになって飛行機で空を飛ぶなんて、小さなこと
僕の夢はそれほど大きかった。

「次はストレートで」

カウンターには、僕以外は誰もいない。
ロックで飲んでいたのだが、頭はますます冴えてきた。
このままでは、栓を開けたばかりのウィスキーだが、
今夜中に、かなりのところまで飲んでしまいそうだ。
バーテンダーが、ゆっくりとストレートグラスに
ウィスキーを注いでいる。
僕の注文のピッチが早いので、
気を遣っているのかもしれない。

「いい響きの名前ですよね」
バーテンダーは、ウィスキーを注いだ後、
瓶を見つめてそういった。
「オーヘントッシャン」
そう、彼は呟いて僕の前にストレートグラスを置いた。

オーヘントッシャン、ゲール語で、
「野原の片隅」という意味だ。
このウィスキーが生まれた蒸留所は、
スコットランド、クライド湾を見下ろす高台にあるという。

僕は今、海を見下ろす高台に立ち、
強い風を受けながら、生きている。
そして、オーヘントッシャン、この店のカウンターは、
僕にとって「野原の片隅」なのかもしれない。